がん検診で肺がんを早期発見・治療

原因が明確な病気は、予防方法も比較的わかりやすいのですが、肺がんのように危険因子がいくつもあるような病気の場合、決定的な予防方法は残念ながらありません。肺がんで命を落とさないようにするためには、早期発見・早期治療に努めることが大切です。

定期的な受診が必要

病気に罹らないための「一次予防」、早期発見・治療を行うことを「二次予防」といい、喫煙やアスベストなどの原因による肺がんは一次予防も可能ですが、それ以外の要因で発症していることの方が多いため、二次予防にも力を入れる必要があります。

肺がんの症状として、胸痛や血痰、しつこい咳などが知られていますが、これらの症状は初期ではなくある程度がんが進行してから出ないと自覚できません。自覚症状が出る前の肺がんに対して早期治療を行うためには、がん検診が欠かせません。

老人保健法の定めによって自治体では40歳以上の方を対象として健診を行っていますが、その項目には肺がんの早期発見を目的とした胸部X線検査が入っています。さあに50歳以上で喫煙本数が多い方あるいは血痰が出ている方には、喫煙者に多く見られる肺門型肺がんを発見するために痰を採取して顕微鏡で調べる喀痰細胞診も実施しています。

肺がんの死亡率は他のがんに比べて決して低くありませんが、ステージの低い段階で治療すれば、治癒の可能性は十分にあります。そのためには自覚症状が現れる前に、肺の検査を定期的に受けることが必要です。会社に勤めている人は、企業の責任で健診が実施されています。自営業や主婦の方も1年に1回は肺の検査を受けるようにしましょう。

肺がんの発症には、遺伝的な要因も関係しているので、親族で既に肺がんになった人がいる場合には、X線撮影や喀痰細胞診だけでなく、呼吸器の専門医と相談してオプション検査を受けると安心です。1日の喫煙本数×喫煙年数で示される数字を「喫煙指数」といいますが、この数字が600を超えるとヘビースモーカーとなります。該当する方は肺のCT検査を一度受けることをオススメします。

  


COPD(慢性閉塞性肺疾患)の危険因子

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、呼吸の際の空気の通り道である気管支や、肺の中の細い気管支の先端にある肺胞に炎症が起こって、肺の中の空気の流れが悪くなり、慢性的に息切れが起こる病気です。これまで肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気がCOPDに含まれます。

COPDの患者数は世界的に増え続けていて、2020年には世界の死亡原因の3位になると予測されています。日本では、2001年の全国調査で患者数は530万人以上と推測され、2007年には700万人を超えるのではないかといわれています。患者さんの約8.5%が40歳以上で、ピークは65~75歳となっています。

COPDのおもな原因は喫煙です。気管支や肺の炎症は、主に、呼吸するときに有害な物質を吸い込むことで起こります。喫煙者のうち、COPDを発症する人の割合は15~20%と言われていますが、患者さんの95%以上は「喫煙歴のある人」です。また、喫煙していない人でも、受動喫煙による影響を受けると考えられています。そのほか、大気汚染や、粉塵などが炎症の原因となると考えられています。

これまで、COPDは、「肺の病気」とされていましたが、最近では、ほかの症状や病気と併存することが多いため、「全身の病気」と言われるようになってきています。次のような症状や病気と併存するケースがみられます。

全身の筋肉が萎縮する…体を動かすと息切れすため、運動不足になりやすく、筋肉が萎縮する傾向にあります。

動脈硬化…日本では、脳梗塞や脳出血など、脳の動脈硬化がおもな原因となる病気の併存が多く、欧米では、心筋梗塞や狭心症など、心臓の動脈硬化がおもな原因となる病気との併存が多くみられます。最近は日本でも心筋梗塞や狭心症との併存が増加してきています。

肺がん…COPDが中等度以上になると、2割の人に肺がんが併存するといわれています。ただし、初期でも肺がんが併存する場合もあります。

骨粗鬆症…骨粗鬆症は高齢の女性に多い病気ですが、COPDがあると、早い時期に骨粗鬆症になったり、進行が早まったりすることがあります。

うつ…患者の半数近くにうつ状態がみられます。COPDでは、常に息切れがあり、咳と痰が出ることなどから、家に閉じこもりがちとなり、気持ちが落ち込みやすくなるからだと考えられています。

肺性心…肺機能が低下すると、肺動脈の血圧が高くなり、心臓の右心室に肥大や拡張が起こることがあります。この状態が肺性心です。進行すると心不全を起こす危険性もあります。

  


狭心症や心筋梗塞など「たばこ病」には様々な種類があります

現在、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんのほとんどは男性であり、潜在的な患者数も女性に比べて男性は3倍となっています。しかし、若い女性の喫煙者が増えており、同じ喫煙量でも女性のほうが重症化しやすいというデータがあるので、今後のCOPDの増加が懸念されています。

しかし、喫煙が原因となるいわゆる「たばこ病」はCOPD以外にもたくさんあります。まず、喫煙は動脈硬化を促進させます。動脈硬化は心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、脳梗塞など、死亡リスクの高い病気を引き起こします。

また、発がん物質を含むタバコの煙の通りに道には、口腔がん、喉頭がん、肺がんが、また唾液とともに飲み込んだ発がん性物質の通路にも、食道、胃などのがんが発生しやすくなります。さらに、発がん物質は肺から吸収され、血液から全身に運ばれるため、膵臓、膀胱、肝臓などのがんのリスクも高めることになります。

妊婦さんが喫煙者の場合には、早産や流産、低体重児の出生が多いことも知られてます。乳幼児の突然死症候群も多い傾向があり、出産後の家族の喫煙によってもリスクは高まります。また、喫煙家庭の子供は、気管支喘息、中耳炎、肺炎などの気道感染症を起こしやすくなります。

そのほか、脳の動脈硬化による認知症は喫煙者も多く、近年の研究では喫煙者はアルツハイマー型認知症を発症しやすいことがわかっています。さらに、喫煙によって脳が萎縮すると言う研究も報告されています。

  


保険加入時の喫煙検査

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療の第一歩となるのは禁煙ですが、生命保険の中にはタバコを吸わない人だけ契約できるものや、保険料が安くなるなど条件がよいものもたくさんあります。その保険の加入には「現在、タバコは吸っていない」という自己申告が必要なわけですが、それに加えて間違いなくノンスモーカーであることを証明する検査が義務付けられているのをご存知でしょうか?

検査内容は、唾液や尿を採取してその中にコチニン(タバコに含まれるニコチンが体内で変化した物質)が含まれているかどうかを調べるというものです。コチニンは、タバコを数週間がある人ならば100%検出され、陽性と判定されます。

家族に喫煙者がいる場合は、その受動喫煙でもコチニン検査に引っかかってしまうこともあります(詳しくは各保険会社にてご確認ください)。検査には専用キットを用います。唾液を調べる場合は、綿棒のような特殊なスティックに唾液をしみこませて検査にかけます。

タバコを吸うにも関わらず「吸ってない」と自己申告して、コチニン検査で陽性と出た場合、その保険会社で今後一切の申し込みが出来なくなる場合もあります。では、喫煙習慣のある人はどのくらい禁煙したらコチニン検査で陰性になるのでしょうか?個人差がありますが、最低でも1年(!)、1本も吸っていない状態でないと陰性になりません。

  


呼吸が苦しくなる自然気胸

自然気胸は10代から20代の若い男性に多くみられる病気で、手術を受ける患者は年間1万人を超えるといわれています。肺で酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞の一部が壊れて融合し、風船のように膨らんだ肺のう胞(ブラ)の破裂がきっかけで起こります。空気が肺の外側の胸腔に漏れて肺が縮み、胸や背中の痛み、息苦しさなどが現われます。

ブラの発生原因は、解明に至っていませんが、身長が高く、痩せ型で、胸板の薄い男性に多いことから、成長期に肺が十分に成長しなかったことが原因と、呼吸器外科の専門医は考えています。経度なら、胸に小さな穴を空けて胸腔の空気を抜き、安静にして肺の穴が塞がるものを待つこともできます。

ただし、破裂しやすい部分がそのまま残るため、再発することも少なくありません。根治するには、ブラとその周辺組織を切除して、穴を縫い合わせる手術が必要です。胸腔鏡手術は、カメラや切除器具を挿入する穴をあけて行います。